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少女一人きりの世界の中でのこと

 少女しかいない世界の中で、時間が止まってしまった世界の中で少女は
一人で考えていた。
「秒針が動かないから時間が止まっているのだろうか。
それとも、自分の心が止まっているから時間が止まるのだろうか」と。

 しかし、そんなこと考えていても答えなんて見つかるはずもなくて、ただ途方に
くれるしかなかった。 少女は壊れた壁掛けの円形の時計を手にとって頬を寄せた。
表面のガラスが割れていて少女の頬に浅い傷をつけた。そこから血がとろとろと流れて
床に数滴落ちた。少女はその血液の跡が美しいと思った。

 でも、それも既に過去のもの。いや、そうじゃない。時間が止まっていると
仮定するなら、少女の血液が床に落ちたことはまだ過去にはなっていないし、
過去になるはずもない。
 けれども、確かな感覚として時計に頬を寄せて、そして頬が時計のガラスで切れて、
血が床に数滴落ちた。この一連の動きは時間があるということを象徴しているのでは
ないだろうか。少女にとってそんなことはどうでもいいことなのだが、何故かそれに
心を奪われてしまうのだった。

 少女は世界で一人だった。この世界には少女以外誰もいなかった。つまり、少女を
汚いとか美しいと評価する基準なんてどこにも存在しなかった。全ては少女の感覚のみで
成り立っている世界だった。
 少女は細く小柄な体系だった。しかし、少女の世界では体型という客観的基準が
存在していなかった。何故なら、この世界には少女しかいなかったからだ。
 
 この世界は矛盾だらけなのだ。全てにおいて。何かが狂ってしまっているのだ。
少女はキッチンからフォークを持ってきて、テディベアに突き刺した。それは貫通して
下のソファにまで穴を開けた。
 過去も未来もないこの世界で少女は一人遊びにふけっているのだ。でも、それを
注意することも、遊び自体の善悪を問う基準も何もなかった。少女しか存在しない
世界で少女の行動に対してそれが善なのか悪なのかという客観的に行動を分析する
尺度が存在していなかった。

 それは繰り返し言うように少女しか存在していない世界だからだ。
 
少女はふいに思った。
「あたしは一体、誰なのだろうか」と。
あたしが誰かという問いに答えられる客観的基準はこの世界には存在しない。
少女のその疑問は一生解くことは出来ないのだ。なぜなら人の存在は他人がいて初めて
自分と他者という関係で認識されるからだ。

 少女の住む、この世界の中で「あたしは一体誰なのか」という問いを立てること自体が既に
無謀で無意味なことなのだ。だって意味を持たない存在なのだから。少女自身が誰かの思考を
媒介する事は絶対にないのだから。

 少女はそのこともよく知っていた。けれども時々悪い遊びをしたくなるように、この世界で
無謀なことをしてみたくなる時があるのだ。
 しかしながら、少女は確かに存在しているのだ。難しい話なのだが、少女が認識している
自分というものは確かな存在だと言う事が出来る。少女しかいないこの世界では少女の感覚が
世界の全てなのだ。少女の感じたことは全て真実で、また偽りのないことなのだ。



【神様という存在の考察】

 人は本当に一人になってみると色々な事柄が見えてくる。
実はすごくシンプルに世界は動いていたのだと認識することが出来るようになる。
少女もその一人だ。少女は「神様」と言われる存在について考えていた。神様はいるのか、
いないのかということについてだ。
 過去から現在までよく討論されてきたこの問題に、人は本当に一人になった時に解を
見出すことが出来るのかもしれない。

 少女の世界には少女しか存在していないのだ。つまり神様はいないということになる。
それが神様がいるかいないかの解である。つまり言い方を変えれば、少女が神様を肯定
すれば、それは確かに存在するし、否定すれば神様は存在しないのだ。又、否定しなく
とも少女がそれについて考察することがなければ、もともと神様は存在しない、全くの
無になる。
 
 つまり神様というのは、人の心の状態を示す事柄であるとも言えるのだ。
少女はそのことに気づくと「はっと」した。何かを選択した場合に、失敗するとか、
成功するとか、それを決めていたのは自分の心なのだと。

 まだ、世界に少女が一人でなかったとき、成功とか失敗という概念が渦巻いていた。
その中で少女は成功するために勉強もしたし、体も鍛えた。けれども失敗する
こともあった。でも、それは自分自身が決めていたことなのだと気づいたのだ。
 
 つまり、神様というのは自分自身の心のことを言っているのだ。人は自分の心で
さえ上手く操れず舵をとれないから、神様という概念を必要としたのだ。そして
自分で責任を取りたくないから、自分の心を守るために神様という概念が必要で
あったのだ。
 あたかも一つの人格を作るかのように、神様という概念に痛みを押し込めて
なんとか理性を保っていたのだ。それはいつの時代も変わらず、普遍のことであった。
 
 でも、本当に一人になった少女に神様の存在なんて必要なかった。
それに少女自身の心が神様であるということが解ったのだからこれ以上、
神様について考える必要性もないのだ。少女は長い間の疑問が解決して、キッチンで
美味しいコーヒーを淹れて少しばかり休息しようと思った。
 
 少女はコーヒーが好きだ。そして煙草も。少女は考え事がひと段落した後に
コーヒーを飲み、そして煙草を吸うのが何より好きだ。少女と言っても既に18歳であるし、
大人ともいえる年齢なのだ。少女しかいない世界なのだから、法律なんてそこには存在して
いないから煙草も吸える。

 読者に文句を言われる義理なんて少女には全くなかった。
この世界には少女しかいないのだから。
 
 読者は少女しかいないこの世界を見ることは出来るが少女に文句なんて言えないし
言ったところでその声は少女には届かないのだ。あなたは、この不思議な世界を、そちら側の
世界から覗き見ることしかできないのだ。
 
 けれども、少し考えてごらんなさい。
こんな非現実な世界が存在していることを。そして、その世界を覗ける立場にいるあなたという
存在自身の尊さをよく考えてごらんなさい。しかも、実際は本当に世界に自分ひとりしかいない
状況なんて作り出せるわけがないし、もし仮にそれが出来たとしても人は精神崩壊してしまい、
この少女のようにはいかないのに、あなたは少女一人しかいないという世界を覗ける。

 自分がそうなるのではなく、あくまで第三者の認識としてそれを垣間見ることが出来る。
これが、どれほどに貴重なことかよく考えてみて下さい。すみません。少し話しがずれて
しまいましたね。少女の様子を伺ってみましょうか。

 少女は煙草をゆっくり吸っていた。少女の世界では少女が何かに困ることなんてないのだ。
少女に必要なものは供給される仕組みになっている。それはどうしてだか解らないけれども、
そういうものなのだ。それに理由なんてなくて、そういう決まりごとなのだ。

 少女が必要とするものは何でも手に入る。少女だけの世界の中で、少女は自由に
煙草を吸えるし、お酒も飲めるし、果実だって食べることが出来る。それは全て
供給されるのだ。少女がそれを望めば、すぐに集まってくるのだ。だから少女は
何も不自由していなかった。何もかも少女が望むモノは手に入るのだから。


 少女は時折、この空間に虚しさを感じた。何でも手に入るけれども、何かが違うのだ。
何かこの世界は現実離れしていると思った。それは当たり前のことで、少女だけの
世界なのだから、ここが現実のはずがないのだ。
少女は何か大切なことを忘れているような気分になった。
でも、それがなんであるのか少女は気づかなかった。

 また、この世界での疑問がはじまるのだった。
少女は次に何を考えるのでしょうか。
 
 それは、またいつかこの世界を垣間見る事が出来るときに
そっと覗いてみましょう。

 もう、非現実のドアが閉まってしまいます。
暫くの間は、この世界を垣間見ることは出来ません。
皆さん大変にお疲れ様でした。

 また、この世界を覗ける日が来ると良いですね。
では、それまで、さようなら。御機嫌よう。
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2011-01-05 : 短編集 : コメント : 2 : トラックバック : 0 :
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非公開コメント

NORIさんこんにちは
この話良いです
この少女にまた会えるとイイナ
2011-01-05 14:57 : いちごはニガテ URL : 編集
いち二さんへ
 いち二さん、ご訪問にコメント誠にありがとう
ございます☆☆☆

 少し長くて、読みづらく字をつめてしまった
にも関わらず、ご拝読くださり誠にありがとうございます☆☆☆

 僕も、またこの少女に会いたいと思います。
彼女はいま何を考えているのでしょうか?
僕もまた彼女の世界を垣間見たいと思います☆☆☆

 いち二さん、ご訪問にコメント誠に
ありがとうございます☆☆☆
また、遊びに来てください☆☆☆
楽しみにお待ち致しております☆☆☆
2011-01-06 01:44 : NORI URL : 編集
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