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理不尽なこと

 狂った現実の中を生きてきた君を僕は決して哀れだとは
思わない。けれど、理不尽に君を脅えさせてきたその現実を
作った奴を、僕は許すことはないだろう。

 ねえ、僕は君の心を踏みにじって、その綺麗なカラダを
傷つけた人間を許すことは出来ない。君がいくら冷めた表情で
昔の事だと笑ったとしても、その傷もその記憶も君が背負っていか
なくてはならないのだから。僕は君の人生を狂わせてきた現実を
作ってきた、君の偽者の家族を許すことは出来ないよ。

 君は背負う必要のない心の傷を癒せないままで、こんなに
絶望だけに包まれて、それでも毎日を懸命に生きているのだ。
もし前世というものが本当に存在して、カルマなんていうものが
本当に存在しているとしても、あまりに酷く、許すべきことでは
ない行為が君に対して行われていた事実がここにあるのだ。

 君は普通の感覚ではまともに生きていくことが出来ないから
君は思春期から心を消してしまうことを自然に覚えた。そして、
理不尽に繰り返される性的虐待に何も感じないようになることを
覚えたのだ。

 それが、どれだけ悲しいことだろう。

 今日、僕と君は知り合ってからはじめての夜を過ごそうと
していた。大好きで、大切で、世界で唯一たった一人の女性だと
心焦がれて、真剣に真剣に付き合ってきて、ずっと君の事を抱く
ことが怖くて、嫌われるのが怖くて仕方なかった。それでずっと
セックスにまで発展することはなく、ただ一緒に映画に行ったり
服を買いにいったり、ディナーを一緒に食べたりして一年が過ぎた。
そして、ようやく君を抱ける日が来たのだ。自分の恐怖も超えて
君をこの腕の中に抱いて、もう離さないように、絶対に離さない
ようにという気持ちで君を抱ける日がようやく来たのだ。

 雰囲気は甘ったるく、どちらも欲情するには充分なシチュエーションで
あった。僕は震える手で少しづつ、君のカラダに触れていった。
大切な君のカラダが傷つかないように僕は乱暴にならないように、優しく
優しく愛撫を繰り返した。君はそれなりに気持ちよさそうにしてくれていた。
でも、最終的に交わろうとする際に、全く君が濡れていないことが分かって
何か僕がまずいことをしたのかと不安になった。 

 「ごめんね、あたし本当は不感症なんだ。それにちょっとくらくらして
ちょっと気を失いそう・・・」と君は苦しそうに言ってから気を失って
しまった。 僕は何事が分からず、救急車を呼んだ。

 救急車で病院に運ばれている最中に、君は目を覚ました。
そして僕の手を握って「ごめんね」と苦しそうに言った。
少し過呼吸気味であった。病院についたときには、それも
随分収まっていて、一応医者に診察を受けたが特に悪い
ところはないという結果だった。

 その、あと僕は君からそうなった理由を聞いたのだ。
思春期のときの性的虐待の体験がPTSDとなり情事になると、
ある程度は大丈夫なのだが、何も感じないし、突然パニック発作、
酷いと過呼吸などで気を失ってしまうのだという理由を君の
口から聞いた。

 それは、大変にショックな内容であった。
僕は、その現実を作り出した人間以下のその男に殺意さえ感じる。
この手で、どれだけ制裁を加えたとしても、その男が犯した罪が
償われることなんてありはしないのだ。死ぬことさえ許されない
ほどの大罪を犯した人間以下の人間なのだ。じわりじわりと、
時間をかけてなるべく長く苦しむように、ゆっくりと切り刻まれ
自然に朽ち果てるのが相応しい、人間以下の男なのだ。
 僕の怒りは、既に頂点に達していてまともな思考なんて出来は
しなかった。

 君は僕の手を握った。強く握り締めた。
そして上目遣いに僕を見つめた。
「ねえ、嫌いにならないで。」と君は瞳にたくさんの涙を
浮かべて、心細そうに小さな声で言った。

 「あたし、あなたに愛されるような綺麗なカラダでもないし
もう随分汚れてしまって、こんな風になってしまったけど。
でもね、あなたを愛しているの。
 あなたは、いつも優しくてあたしが風邪で寝込んだとき料理を
作りにきてくれて、朝までベットの脇で手を握ってくれていたよね。
 あたし、どんなに優しい男の人も実は怖かった。優しいけれど、
その心の下に何を隠しているのだろうと思うと震えが止まらない
くらいだった。
 でもね、あなたが風邪のときに料理を作って、夜もずっと看病して
くれて手を握っていてくれたとき震えなかったんだよ。安心できたんだ。
だから、あなたとなら大丈夫だと思ったの。でも、やっぱりまだ癒えてない
みたいで、こんな姿見せてしまった。 でも、あたしは、あなたを愛してる。
だから嫌いにならないで」と君は言って僕の手を強く握って大粒の涙をぽろぽろ
と流してうつむいて、声にならない声で泣き出した。

 そんなことで嫌いになるわけないじゃないか。
僕にとって守るべき人が君で、僕は君が唯一の女性なの
だから。そんなことで嫌いになって離れるなんていうわけ
ないじゃないか。

 「大丈夫だよ。二人で歩いていけばいいんだ。僕は君を嫌いに
なるわけないよ。こんなに大切な人が君以外に存在するはずないんだ。
そんな不安にならなくていいんだ。ゆっくり二人で生活をして、そんな
過去のこと、ゆっくり二人で癒していこう。僕も一緒にそれを背負って
いくから。ねえ、だから君もそんなに自分が悪いと思わないで欲しいんだ。
君のせいではないのだから。今から二人で温かい毎日を過ごしていづれ
自然に戻れるから、風邪の時みたいにずっと一緒にいるから、僕は君と
ずっと一緒にいたいのだから」僕は君を優しく抱き寄せながら言った。

 僕たちは、手を繋いで病院を後にした。
そして、何事もなかったかのようにいつもの二人のデートの
帰り道のように他愛もない話をしながら家路に向かった。

 泣いたばかりだったけれど、その時の君の笑顔がいつもより
明るいような気がした。そして、いつもより自然に心からの
笑顔に見えた。

 僕と君は、これから二人で生きていくんだ。
互いの醜い過去も、その痛みさえも共有して、それを
二人で作り上げる穏やかな時間の中で消してしまうんだ。
幸福な毎日を繰り返し、その過去から自由になるんだ。
それが、君と僕で歩んでいくことだと思うから。
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2010-10-17 : 短編集 : コメント : 4 : トラックバック : 0 :
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過去は終わった事ですもの。

これから。

これからどう過ごしていくかが大切だと思います。

その過去があるから、今の良さが分かるはずです。

なーんて、本気になって考えてみました。

だって、実話に聞こえますもの。

実話でもお話でも、とっても良い内容だなと思いました。
2010-10-17 04:36 : キャサリン URL : 編集
キャサリンさんへ
 キャサリンさんご訪問にコメント誠にありがとう
ございます。

 そうですね、過去は終わった事です。
これから二人でどうしていくのかが重要だと
思います。

 嫌な過去。そして癒えなかった傷。
それでも人につけられた傷は、人との出会いに
よってまた癒えていくのです。

 「実話に聞こえる」とはキャサリンさんは
実に鋭いですね。このお話は実はを基に綴り
ました。
 その人が幸福に包まれることを願っています。

 キャサリンさん、ご訪問にコメント誠にありがとう
ございましす。また、遊びに来て下さい☆☆☆
 大変楽しみにお待ち致しております☆☆☆
2010-10-17 19:03 : NORI URL : 編集
初めてコメントさせていただきます、もこと申します。

このSSを読んだあと、なんとも言えない幸福感に包まれました!

女性は過去につらい経験をしましたが、それを包み込んでしまう男性に、本物の愛を感じます。

ここから二人で素敵な未来を作っていけたらいいなぁ…と明るい未来を感じさせますし。


本当に素敵な文章をありがとうございました:)
2010-10-17 19:24 : もこ URL : 編集
もこさんへ
 もこさん、ご訪問にコメント誠にありがとうございます。
この短編の物語で何か温かいものを感じて頂けた様で
大変に嬉しいです。

 きっと、辛い経験も人間から受けるもので
それを癒すのもまた人間なのかもしれません。
このように温かい人間関係を築いていきたい
と思いますね。

 こちらこそ、ご拝読頂き誠にありがとうございます。
また遊びに来て下さい。大変楽しみにお待ち致しております。
2010-10-18 14:10 : NORI URL : 編集
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