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二人で

 君は囁くように小さな声で僕に言った。
「また一人になるのが怖かった」と。
きっとまたいつか一人になってしまうのではないかという不安を消し去ることは
難しいことで、それを忘れさせるということもまた困難なことだった。

 僕にそれが出来るだろうか。君の不安を消し去ることが出来るだろうか。
いつか、僕はこんな新鮮な君への気持ちを忘れてしまうのではないかと不安だった。
僕には自信がなかった。君を好きでい続ける確信を持てずにいた。

 そんな僕の気持ちに気づいたのか、君は不安そうに僕を見つめ精一杯のくちづけで
僕の気持ちを確かめようとした。そのくちづけを僕は素直に受け入れることが
出来ているだろうか。そのくちづけに僕も君も永遠を感じることが出来るだろうか。
そして君の不安はそれで和らぐだろうか。

 何もかもが君と僕とのことで、その間には何かが入り込む隙はなかった。
けれども、僕はどこまで君を想っていて、君の気持ちに応えられるのであろうか。
僕はいつも不安で不安でしかったなかった。君を失うことも含めて考えられる全ての
否定的な考えが怖くて仕方なかった。

 君は言った。
「ねえ、あたしは怖いんだ。また一人になってしまうことが怖いんだ。
家に帰って来ても誰もいなくて夜眠るときも一人で、夜の闇に押しつぶされて
このままいなくなってしまうのではないかという気持ちになるのが怖いんだ。
あなたが、そこに居てくれるだけあたしは救われるんだ。でも、そんな不安より、
あなたを失ってしまうのではないかという不安のほうが今ではもっと怖いの。
あなたを失ってしまった日の夜から、あたしはどうしたらいいの。二つの絶望と
恐怖と戦わなくてはいけないの。そんなの嫌だよ。あたしは、もう一人は嫌だよ」

 僕はそんな君の願いにどこまで応えることが出来るだろうか。
僕は本当にそのように生きていけるだろうか。君と二人で永遠を見つめて
人生を歩んでいけるだろうか。それが不安だった。君を泣かせることも、
君を怖がらせることも全てが不安だった。
 
 僕はどうしてこんなに弱いのだろうか。君を悲しませてしまうほど弱いのだろうか。
僕は自分が情けなくて、非力でそして何も出来ない男なのだと感じてしまう。
でも、そんなことでは君と一緒に居ることは出来ないから僕はかなり無理をして、
そして強がっていた。いつも君の前では笑うようにしていたし、いつも君が
泣き出さないようにと気を使っていた。

 でも、そんな苦痛を伴う努力なんてすぐに壊れてしまうもので、
そんな無理をしていることを君はとっくにお見通しだった。

「ねえ、あたしの為にそこまでするの。ねえ、あたし一人は怖いけど、
あなたが苦しそうにしている姿も嫌だよ。ねえ、そういうことじゃないんだよ。
二人でいたいって、ずっと一緒にいたいってそういうことじゃないんだよ。
きっとね辛いこともあるし、これから二人で喧嘩したりすると思うけど、
でもね嬉しいことも辛いことも二人で分け合って生きていきたいって意味なんだよ。
ねえ、そんなに無理して一人で抱え込まないで。
お願いだから、あたしのことも信頼して欲しいんだ。
あたしは弱いしすぐに泣いてしまうし、俯いてばかりだけれど、
でもねあなたと二人なら辛くても大丈夫だよ。だから辛いことを一人で抱え込まないで。
お願いだから、ねえ。あたしを信用して」

 君の方が僕より何倍も強い人なのだと言う事をこのとき理解した。
君には何もかもお見通しで、僕が君のことを守るつもりが、心配をかけないつもりが、
全て見透かされていて君を余計に心配させていたことを僕はひどく後悔した。

 そして、今まで心に溜め込んできたものが一気にせきを切ったように
心の底から溢れ出して僕は嗚咽を漏らして泣いた。そんな僕の頭を君は胸に抱き寄せ、
ただただ頭をなでてくれた。まるで子どもをあやすように、ずっと、ずっとそうしてくれていた。
 君の優しさはこの世界でどこの誰よりも深くて、そして暖かいものだと思った。
君は僕の大切な人で、僕も君の大切な人になりたいと思った。今より、もっと君に大切に
思ってもらえるようになりたいと思った。そして君と人生を歩んでいきたいと思った。

 一人で何かを抱え込むのではなく、嬉しいことも、辛いことも二人で分け合っていけるような
関係になっていこうと思った。それは、君への信頼の証で、また愛情の証でもある。
君が僕に注いでくれる深海よりも深い深い愛情のように、僕もまた君へ深い深い愛情と
信頼を見せようと思った。

 これから、僕たち二人にどんなことが起こるのかは全くわからないけれど、とにかく僕は
君という人と一緒にいようと思った。どんな辛いことがあっても君と二人でいれば
大丈夫だということを理解できたから。そして君を心の底から信頼しているから。

 きっと、僕は君をずっと好きだし、これからも君を信頼し続けるだろう。
僕の弱い部分を見捨てずに受け入れてくれた君、僕の足りない部分を埋めようとしてくれた君、
君という全てが僕にとってかけがえのないものなのだ。

 僕はどうしてあんなに自信がなかったのだろうか。
こんなに僕を理解してくれる人がいて、その人をずっと好きで居られるかなんて
下らない心配をしていたのろうか。
 僕は君が好きに決まっている。このまま永遠に、君を好きに決まっている。
そんな当たり前のことも確信できないほどに僕は何を恐れていたのだろうか。

 勇気と確信と愛情を持って君に言おう。
「あなたが好きです。これからも、ずっと先の未来でも、君の事を愛しています。
僕はあなたと一緒にいれば、優しい気持ちになれるし、きっとこの先も穏やかに
生きていける。あなたが傍にいてくれれば、何も怖いものなんてない。
あなたを愛しています。心から」
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2010-10-02 : 短編集 : コメント : 4 : トラックバック : 0 :
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非公開コメント

あなたのブログがとても好きです。

ひとりの夜がとても怖い。

私を救って下さい。
2010-10-06 23:06 : 美月 URL : 編集
美月さんへ
 美月さんコメントご訪問、誠にありがとう
ございます。
 ブログを好きだと言って頂けて心から
嬉しいです☆☆☆

 ひとりの夜はとても怖いときがありますね。
その闇に吸い込まれて消えてしまうのでは
ないかという想いになったり。
 誰かに抱かれて眠りたい夜などもあるかと
思います。でも、夜というのも良いものですよ。
僕は夜の方がどちらかというと好きです。
あまりたくさんの物が見えない分、安心できます。

 僕は美月さんを救うことが、もし出来ると
したらこうして言葉を綴っていくことしか
ありません。非力かもしれませんが、これが
僕の精一杯です。

 けれども、少しだけでも美月さんの不安が
晴れたりしたらと思います。
 また、寂しい気分になったら、僕の文章で
良ければ読みに来てください。

 もし少しでも寂しいとか怖いという
気持ちが解消されやすいことで僕が貢献できる
としたらVOICE BlogもUPしていますので
そちらも覗いて見て下さい。

 僕は寂しいときには、ラジオでもなんでも
良いでのすが、安心できる声質のパーソナリティの
ラジオやVoiceをよく聞きました。

 また、遊びに来てください。
少しでも美月さんの心が寂しさや怖さから
開放されますように。
2010-10-07 03:35 : NORI URL : 編集
見ず知らずのあなたに 弱音をはけたのは、きっとあなたの書く文章に癒されているからです。

見ず知らずの私に優しいお返事をありがとうございました。
2010-10-07 11:17 : 美月 URL : 編集
美月さんへ
 美月さん、ご訪問にコメント誠にありがとう
ございます。

 僕の書く文章で、何か心が楽になってくれていたり
癒されたり、そんな風に感じて頂けて本当に嬉しい
です。

 悲しいことも、辛いことも、怖いことも
人生にはたくさんあるかもしれません。
 けれど、きっと温かい場所があると思います。
人の人生には、それぞれに温かい場所が用意
されていると思います。

 だから、美月さんもきっと、その温かい
場所を見つけることが出来ると思います。

 のんびり考えすぎないように
歩んでいきましょう。

 また何かに疲れたり、寂しさを感じたり
したら、ここに遊びに来て下さい。
 心からお待ちしております。

 美月さんの、心が温かく包み込まれ
ますように☆☆☆
2010-10-07 19:08 : NORI URL : 編集
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