ああ。そうだったんだ
本当は僕は怖かっただけなんだよ。感情の起伏に胸が
押し潰されそうになる感覚を味わいたくなかっただけなんだ。
だから、なるべく人と深くは関わらないように、なるべく
感情移入しないようにしていただけなんだ。
一緒にいる時間が長くなってあまりに楽しい時間を過ごして
しまったら、分かれるのが寂しいだろ。あの胸の感覚が辛い
からさ。
まるで時間が止まってしまったかのように、心がカラッポに
なってさ、僕自身の周りにある本や一生懸命に書き殴った
文字の書かれた紙が、切羽詰って作業をしていたパソコン
全てがまるで息をしなくなったかのように静まりかえるんだ。
それがさ、あまりに辛くてね。胸が押し潰されそうでさ
もう感じたくなかったんだよ。あまりに胸が苦しくなるからさ。
でも、少しだけ、あの感覚が懐かしい気がするんだ。
悲しい、切ない、辛い、愛しい、楽しい、嬉しい。どれもが同じ
性質のものだと気がついたんだよね。
だから、もう一度手を伸ばしてみようかと思うんだ。
君の心にさ。もう一度手を伸ばしてみようと思うんだ。
楽しい時間過ぎて胸が押し潰されそうになっても、
例えば君と喧嘩をして、いつか繋いだ手が離れてしまって
胸が抉られる様に痛んだとしても、もう一度手を伸ばして
みようかと思うんだよ。
もっとも怖かったのは、楽しい時間が過ぎてしまった
後の事。でも、それが心だというのならもう一度手を伸ばして
見ようと思うんだ。
今日の今日まで勇気をなくしていたのだから。
もう一度勇気を出して手を伸ばしてみようかと思うんだ。
どれだけ胸が押し潰されそうになってもさ。