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狂ってしまった僕と君

 それが最後の希望だったのだろうか。君にとってはそれが希望であったの
だろうか。僕には何も分からないままで、何をどのように理解して君のことを
見つめたらいいのか、その見当さえつかないまま僕は君と一緒にいた。

 それは幸福という温かな生活とは随分かけ離れているような生活だった。
僕は毎日のように止まることのない君の自傷行為を止めなければならなかっ
たのだからだ。それは常軌を逸した生活で、自分がこのような生活に身を置く
ことになるとは僕自身想像もしていなかった。

 君は可愛い人で、とても小さなカラダの人でとても女性らしい女性で
あった。けれど、いつからだろうか。心が壊れてしまったんだね。どこかで
間違えてしまったのだろうか。僕は君との関係の中で何か間違えてしまったの
だろうか。君はいつからか自傷行為を繰返すようになり、それが酷くなり、僕は
全く家から出られなくなってしまった。二人でいる以外の事を選択する余地が
僕には無くなってしまったのだ。

 君は独占欲の強い人で、そして刹那的な人。破滅に向かうことは君にとって
は永遠に向かうという尊い行為で、その幻想は日々強くなるばかりだった。
そして君はとてもサディスティックな人。

 僕は見えない紐で縛りつけられていく。そう、僕はどんどん縛り上げられていく。
もう、身動きも取れないほどに、僕は縛り付けられていく。いつしか、僕はそれに
慣れてしまったのだろうか。この異常な状態に僕自身が安心を見出してしまった
のだろうか。

 終わることの見えないこの関係、この自傷行為の繰り返しに、僕は一瞬の
安堵のような幻想まで見るようになってしまった。それは間違ったことだと
頭では理解しながら、僕の生活の中で君が全てになってしまったのだ。

 君は自傷行為の中で僕を見つめるとき満足そうな顔をしている。
その瞳に僕は吸い込まれてしまうのではないかと錯覚するほど、その中の君は
女性らしく、そして壊れていく過程の美しさを放っていた。
それは強烈で簡単に逃げられるような類のものではないのだ。

 壊れていく様があまりに美しく散り行く桜のように美しく一瞬も目を
離せないのだ。僕の精神世界の基準は崩壊し、君に侵食されていく。
これがどれ程に罪なことで背徳的なことであろうか。この背徳的な行為が
どれだけ僕に悦楽を与えるのだろうか。それは計り知れないほどに大きく
僕はますます抜けられなくなっていく。

それがどれだけ僕に苦痛という悦楽を与えることなのだろうか。僕は
すっかり落ち着いて眠ってしまった君を見つめて「随分と自分は非現実になっている」
と思った。

 寝顔はこんなにも可愛く愛しく、それはこの世界で最も美しいのではないかとさえ
感じてしまうほどであった。しかしながら、君は昔とは随分違っていて、この世界に
いること、存在することそのものが苦痛だと言うようになってしまった。

 以前は随分と明るくて健康的な女性であったというのに、どこで間違
えてしまったのだろうか。原因はよく分からなかったけれど、そうなって
しまった以上は仕方のないことなのかもしれない。

 しかしながら、最も問題なのは彼女がこのようになってしまったことで
はなく、むしろ僕の方にある。それは彼女という存在が僕を精神的に縛り
つけ、非現実な世界に引き込まれていくほどに僕はそこに悦楽を感じて
しまうということである。

 彼女を守ろうと思っていた僕が、その彼女の異常な刹那に侵食され、
そこに快楽、悦楽、背徳感を感じてしまっているのだ。

 まさに「ミイラ取りがミイラになった」ような状態である。僕は君から
縛られる度に、その強さが増して行く度に、その快楽が強くなっていくことを
感じていた。

 それが間違いだとしても精神を縛り上げられていく感覚は、実際に縛られ
るという行為よりもさらに背徳的で実際のそれよりもさらに官能的で刺激的
な感覚であった。

 僕はこの感覚を楽しんでいるのだ。僕は実際にこの感覚を楽しんでい
るのだ。痛いことも全ては快楽のため。辛い思いも全ては悦楽のため。
どのような現実があるにしてもそれにそむく背徳感はどのような出来事
よりも官能的であるのだ。

 もう、僕は認めるしかなかった。君から離れることは出来ないと。
君から逃げ出すことは出来ないと。もう、君を守るとか、助けたいとか
そんな想いではなく、僕はただ傷つけられることに官能を覚え、そこに
悦楽を見出してしまったのだ。もう認めるしかないのだ。

 僕は月明かりに照らされた君の頬にそっと手を添えて非現実な世界に
きてしまったものだと物思いにふけり、君の頬の温かさを掌に感じていた。

 君は朝になると昨日のことが嘘であったかのように明るく、そして優しく
微笑んでいることが多い。実際、朝は君の笑顔が本物であると感じることが
出来る時間で、僕はこの時間が何より穏やかで好きである。

 でも、夜の情緒不安定な君からは逃げられない。
どこまでいってもあの悦楽からは逃げられないのだ。

 分かっているよ。逃げようなんて無駄なことなんだ。それは分かっている。
でも、これが君の望んでいることなのだろうか。本当にこれが望みなのだろうか。
どのように考えてもそれは破滅に向かっているような気がした。

 でも、それさえどうでも良いことなのかもしれない。どれだけ僕が何を思おうと、
僕は君に拘束されているし、あの悦楽から逃げられるわけがなく、どっぷりとその
快楽に身を委ねてしまっているのだから。

 でも、君と僕は昼間はどこから見ても普通の仲の良いカップルに見えるだろう。
凄惨な夜が毎日のようにあって、毎日僕がそれを抑止しているなんて誰が思う
だろうか。昼間の君と僕は周囲の人々からみれば幸福そのものであると思う。
手をつなぎ、二人とも微笑み、買い物をして、それは誰からみても穏やかであるからだ。

 しかしながら、それはあくまでも表の表情であって、誰も気付きはしない世界が
僕と君の中に出来上がってしまっているのだ。きっと、これは誰も気付かない。
別に誰かに気付いてもらう必要もない。

 どこまで、エスカレートしていくのかは分からないが、もう抜けられないくらいに
依存してしまっている事を僕自身が最もよく理解している。それはドラッグのように
簡単に抜け出せるようなものでもなく、逃げ出せるような類のものでもないのだ。
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2011-09-25 : 短編集 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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