FC2ブログ

キミはダレ?

 暗闇の中で一人ぼっちの君は一体誰なんだろうか。
僕はいつも不思議でならなかった。僕の心の中の小さな箱の中。
そんな場所に、僕ではない誰かがいる。僕の心の中の小さな部屋。
僕から見たら箱にも見えるような小さな場所。心の隙間。

 そこに、いつも一人ぼっちで居る君は一体誰なんだ。
僕ではない誰かであることを僕はよくしっている。
なぜなら、僕の心は僕の心だからだ。

 もし、僕の心が見せている、もう一人の僕だとしたら
こんなに違和感を感じたりはしないだろう。でも、他人が
入り込んでいるという違和感が確かにあるのだから、僕では
ない誰かなのであろう。僕はずっとそう思っている。

 
1 トランス

 僕はある夜に試みることを決意した。
心の中にいる、あの人が誰であるのかを突き止めると。

 リラックスをして瞳を閉じて、僕は瞼の裏に
緑色の光を見つけて、そこから深層意識まで入っていく準備を
して、深呼吸を何度も何度も繰り返す。

 やがて、カラダ全体に気持ちの良い痺れが訪れて、ゆっくりと
深層意識の中に入る準備が整ってくる。浮遊感を伴ってくれば
あとは、その場所に行くだけだ。

 
2 深層意識の中の不思議

 深層意識の中はとても不思議な空間だ。
僕は何度もこの場所に来たことがあるけれど、来るたびに景色が違う。
今日の深層意識の風景は随分と退廃していると感じた。自分の意識の
はずなのだが、物質としてのカラダが限界を迎えるまでは、つまりは
体調を崩すまでは、深層意識がやられていくのだ。僕は平気なつもりで
いたけれど、これだけ退廃している意識の風景を見ると、少し休息
しなければならないという事を感じた。

 でも、今日は自分の状態を見るためにこの場所に来たわけではない。
あの、小さな箱の中にいる誰かの正体を突き止めるために来たのだ。
いつも小さな心の隙間でひとりぼっちの、誰か分からない別の意識体が
一体誰であるのかを突き止めるためにここに来たのだ。
 しかし、自分の意識世界の中といっても、自分が把握できないくらいに
広く、あの場所がどこにあるのか、もしくは意識階層が違っているのかということ
さえも分からない。まずは、あの場所に行くための道を探さなくてはならない。

 深層意識の中で見える、その景色は自分自身が記憶と物質的エネルギーを
具象化している世界であるので、すぐに変わってしまう事は珍しいことではない。
ほら、夢を見ている間にいきなり場面が変わったりするのと似ている感じ。

 ゆらゆらと世界が変動を始める。僕の世界だけれど、記憶が断片化して
いるということを此処にくるといつも思い知らされる。それでも、それを
体系化しているのだから人間の脳というのは本当に優れているのだと
感じずにはいられない。

 ようやく世界が安定して、世界が具象化すると僕は
自分の意識の中であるはずなのによく知らない場所に立っていた。
自分の記憶にこんな場所があったのかと驚くことしか出来なかった。

 行ったこともない洋館の中で、本棚がたくさん並んでいる。
その洋館は壁、シャンデリア、階段、本棚、全てが真っ赤なのだった。
そんな洋館見たこともないし、きっとテレビの影響で覚えている類の
記憶の断片でもないことは確かだ。

 自分の意識階層を越えた部分で、どこか他の意識と繋がっている
らしい。つまり、誰かの記憶の中にいるのだ。素粒子の振動として
宇宙は全てと繋がっている、それは人間と人間同士も同じことで
繋がっているのは当然のことだから不思議ではないのだけれど
殆ど僕くらいの力だと他の意識と意識空間を共有することは出来ないし
僕自身がそこに入っていくことなんて不可能なことだった。

 偶然、とても低い確率で同じ振動数の意識を繋がることはあるけれど
殆どの意識体が独自の振動数を持っているために、自然に同じ振動数に
なることなど殆どありえないから、これは奇跡に近いことだ。


3 本題

 おかしい。自分の意識の隙間で泣いている男の子を
見つけにきたはずであるのに、そこに行こうとしたら別の意識体の
意識空間に来てしまった。これでは、全くの見当違いだ。
いかに、この現象が奇跡であろうと僕は他の意識体の意識の中に
入りたかったわけではないのだ。

 戻る場所を探そうにも、深層意識の具象化に伴って
ここにきてしまったから、意識の振動数の変化を待って、この世界から
放り出されるのを待つほかない。

 僕は、振動数が変わるまで特にすることがない。
本棚に近づきどのような本があるのか見てみようと思った。
本も全て真っ赤な表紙で、中身は全て真っ赤であった。これでは
読むことも出来ない。仕方なく、僕は真っ赤なソファに腰掛けて
この真っ赤な世界をぼんやりと眺めた。

 「ギイ」と扉の開く音がした。
「意識世界へようこそ」と、そこには正装をした老人が立っていた。

 老人は優しい顔をしていた。穏やかで敵意も何もそこには存在して
いなかった。ただ、穏やかな老人がそこにいるのだった。

「君が此処に来ることはわかっていましたよ」と老人は言った。
僕は立ち上がって、「あの、どういうことでしょうか」と僕は
わけも解らずに老人に聞いた。

「君は少年を探しにきたのだろう。いつも泣いている少年を」
「ええ。そうですが。これは誰の意識ですか。僕の意識の中でない事は
よく分かります。こんな部屋を意識の中で具象化する記憶を僕は持っていない
はずですから他の誰かの意識の中だと思うのですが」

「君は随分と意識の世界に精通しているのだね」と老人は穏やかに言った。
「まあ、自分の意識空間を彷徨うことは何度もしましたから」
 老人は穏やかに笑った。
「君はおもしろいな。でも、まだまだのようだね。君は此処を別の意識だと
思っているのだろうが、此処は確かに君の意識の中なんだ」と。そして
老人は続けた。
「この私も、君の意識の中の存在であって、君の細胞の中の微量な記憶が
私を具象化させているのだ。そうだな、いわば君を構成している全ての
歴史が、つまりは君の祖先の記憶が君の中に宿っていると説明すればいいかな」
と老人は説明をしてくれた。

 つまり、言ってしまえばこれは自分の中にある他の意識であって
その振動数を自分が感じられるようになったという事であるのだろう。
しかしなぜなのだろうか。

「君が知りたいのは男の子の事だろう」と老人は言った。
「ええ。その通りです。でも・・・」と僕が続けようとしたところを
老人がさえぎった。
「もう、分かったから満足なんだろう。君は」
「ええ。振動数の違う細胞の記憶が、それであったという事ですよね」
「その通りだ。でも、それも君を構成する一部であるということだね」

 つまりは、僕は僕が生まれるまでに積み重ねられてきた遺伝子の記憶を
全て自分の中に持っているということなのだ。そして、それを背負って
生きていかなくてはならないという事であるのだ。
 僕にはそれだけ分かれば充分だった。

 老人は微笑んで「それなら、もう満足だね。君は元の世界に返りなさい
ここの記憶は、今の君に影響が大きすぎるし、過去の重すぎる過去を
意識する必要もない。君は君の人生を歩むんだ。そして細胞を残しなさい」

 そして、僕は自分の意識の深い部分から目覚めたのだった。
あの少年には会えなかったが、しかしながら、その少年の記憶が
僕の中にあってそれを知らずに背負っているけれども、その過去を
知らない間に糧にして、今を生きることが重要なのだと思うと
僕にはそれだけで充分であった。
スポンサーサイト



2011-03-07 : 短編集 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
コメントの投稿
非公開コメント

« next  ホーム  prev »

プロフィール

NORI SA

Author:NORI SA
【SEX】
Man

【My Activity】
文章作成/詩/創作活動/写真/
WEB/エッセイ/学術関連文書/
執筆活動/

【My Works】
企業内法務/事業企画運営管理/
国外取引契約業務/
契約書作成/WEB対策/ 
英文契約書作成/

人気ブログランキングへ

ブログ広告ならブログ広告.com

ブログ内検索

フラワーギフトのBunBun!Bee

カレンダー

03 | 2020/04 | 05
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -

ブログ更新履歴



ブログ移行作業中 (07/18)

当サイトのブログコンテンツの移動作業中 (01/20)

最終的な結果がわかっていても・・・笑うんだよ (11/17)

抜け殻 (10/13)

(10/06)

(10/06)

さあ、もう少し仕事をしよう (09/08)

案外と自分が変わったと感じた (07/20)

人間はひとつ事しか出来ない事をしっかり知る事 (07/20)

あまりに光が眩しいと・・・ (06/16)

まだ、これから (06/12)

それぞれに正義があるから (05/20)

もっと素朴な事のような気がした (05/09)

落ち着いて心を揺らさないで (04/20)

今がら辛いなら 考えるという行為を一時やめよう (02/20)

心を揺らさない事 (02/04)

この世界を定義するもの (01/25)

全身全霊で受け止めて (01/12)

2016年のスタート (01/11)

結局のところ、結果を出したい目の前の事を好きにならなくてはならない (12/20)

もうすぐ年末です (12/20)

いつまでも書いていこう (11/15)

広大な寂しさが広がる世界の中で (11/09)

寂しさに苛立つ事が最も悲しいこと (11/03)

新しい気持ち 新しい考え方 (10/27)

君想う (09/21)

30歳を迎えた自分とブラックバス釣り (08/12)

2015年初夏(?) 最近ブラックバスを釣りに出かけました  (07/21)

キミのココロの扉を叩いてごらん (07/14)

夏風邪です・・・ (07/09)

総記事数:

最近のコメント

月別アーカイブ

☆普通の日にもお花を飾ろう☆

はちが可愛かったのでフラワーショップのバナーを掲載しました。 ページが少し華やかになった気もします(*´ω`*)
フラワーギフトのBunBun!Bee

フラワーギフトのBunBun!Bee




【パニック障害を治そう】

下記バナーはNORIが製作した、パニック障害のホームページです。 簡素ながら、実際にNORI自身がパニック障害を患いましたので、同じ 疾患を持っている方や、その他メンタル面の事などでお悩みの方の 解決の糸口になれば幸いです。
パニック障害を治そう

【愛はここで生きている 音声版】

【愛はここで生きている】の音声版です。 このVOICEは、文章版の朗読ではなく、アドリブで マイクの前で、思い付いたことを語っていきます。
VOICE Bunner

NORI-Creation

ホームページを立ち上げました。こちらの内容を少しづつ 充実させながら、執筆依頼、サンプル、作品などを発表して いきたいと思っています。PDF-BOOK、Web-BOOKなどの販売も 行っていきたいと思いますので、ご活用下さると嬉しいです。
Nori-creation  

NORIへの連絡先

原稿の執筆、ライター業務を受け付けております。 ストーリー、詩、社会時事、恋愛など、幅広く 執筆させて頂きます。  条件、納期、原稿料、会社名など記載のうえ 下記メールフォームからご連絡下さい。

名前:
メール:
件名:
本文:

もし、ブログ読者様でNORIに連絡したい という方がいらっしゃればブログ読者様も こちらからご連絡下さい。

RSSリンクの表示


  • SEOブログパーツ

Blogranking参加中

少しでもあなたの心が温かくなったら押してください blogram投票ボタン

昨晩の夢を占ってみよう

易学占い

迷いや悩みを自分の潜在意識に 相談してみましょう

【PR商品】


このブログに足りない要素を教えて下さい

いつも、ご訪問にコメント誠にありがとう ございます。何か改善の手がかりを頂 けたらと思いまして投票をつけました。
ご協力誠にありがとうございます。 これからも、改善をしてよりよい 文章を綴っていきたいと思います。

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる